「伝説の外資トップが説く リーダーの教科書」感想

先日、👇の本をおすすめされたので帰省中の移動を利用して読んでみました。

伝説の外資トップが説く リーダーの教科書

伝説の外資トップが説く リーダーの教科書

「参考になりました!ありがとうございます!!」で終わるのももったいないかなと思ったので、気になったところをまとめてみました。現在、自分はマネジメントのポジションではありませんが、新卒社員のメンターを任されています。なので本エントリでは要点をリーダー初心者として気になるところ(第1章 ~ 第2章)に絞りました。

第1章: メンバー、これからリーダーになる人向け

リーダーを目指す人、もうそろそろ部下が付くかもという人はこのあたりを意識しながら仕事してみよう!という内容ですね。

「付加価値」を意識する

上司が評価する気持ちになるのは、もう一歩踏み込んで仕事をしてくれたとき

「そりゃそうだ」と言われるかもしれませんが、ちゃんと実践するのは難しいなと常々感じます。自社を見ても、成果を上げている人は大体踏み込んだ仕事が出来る人ばかりなので、自分も頑張らねば…と思います。 ちなみに「踏み込んで仕事をする」というのは結果を出すだけではなく、「手を挙げて積極的に発信する、新しい事に挑もうとする、行動する」も含まれるようです。もちろん異論を唱えるだけでは意味がないので、前向きな代替案がセットになりますが…。

願望 + 時限設定 + 行動計画 = 目標

願望さえ持っていれば物事がうまく運ぶというのは流石に嘘なので、時限を設定し行動計画もくっつけましょうという話ですね。具体的なアプローチの見えない目標?は夢か何かですしね。

成功の反対は、目標のない生き方をすることだ

自分はあまり遠くの目標は考えてませんでしたがどうなんでしょう。どの粒度の目標を指しているのかは確認したいです。

「実力」とそれを「認識する力」がある

身につけた実力を認識できるようになるのは少し後の話。誰かが悩んでたらこのネタを活用します。

これで良いと思ったらそこで終わり

If you think you are good enough, you are finished. 「自分がけっこうできあがったなんて思ったら、もうそれでおしまいなんだ」

耳が痛くなってきました😇。 自分の場合、ある組織に2,3年もいると大体コンフォートゾーンに入ってしまい、怠けがちです。まさしく「自分はけっこうできあがったな」とか考えちゃうタイプです。

本書ではこういった状態に対する対策として「健全な不満の火*1」を燃やし続ける話を紹介しています。じゃあ具体的にどうやって?という点はよく分からなかったので、別途調べてみたいと思います。

上司に「人気」などいらない

上司に必要なのは「人気」ではなく「人望」。人気には「尊敬」と「信頼」という要素が含まれていません。これらは上司のスキルと仕事に対する情熱に紐付いてくるもの。人望があるとどうなるかと言うと…

人望のある上司とは、「また、あの人と一緒に仕事をしたい」と思われる上司である。「あの人のあとについていきたい」と部下に慕われる上司である。(中略)よい上司とは、究極的には、上司という立場を離れても、一緒に食事をしたい、と人から思ってもらえるような人である

という事になるそうです。いつかそんな上司になりたいですね。

また、「人気」と「人望」を分ける要素として「やさしい上司」「厳しい上司」も分かりやすい例となります。言い換えると「緊張感のない上司」か「緊張感のある上司」でしょうか。本書では後者の部下である方が断然成長できるとしています。しかし、ただ厳しいだけでは人望は得られません。部下が納得できるような、頑張れる環境を作ることが前提となるからです。このあたりは第2章で解説されています。

この節のみ場違いな気がしないでもないですが、緊張感のある上司に付いてみろという事でしょうか?🤔(多くの場合、上司は選べませんが…)。

人は論理により説得され、感情により動く

あなたは仕事ができるというだけの人に、ついていくだろうか

これも「そりゃそうだ」案件のように見えますが、これをちゃんと意識するのは難しく感じます。感情への働きかけ方も学んでいきたいですね。

ダメな人の七つの特徴

この表現は好きではないですが、内容には納得感があります。

  1. 自分がダメだと思っている人
  2. すぐあきらめる 人
  3. 友を持たない人
  4. 師(メンター)を持たない人
  5. 目標を持たない人
  6. 快適ゾーンに閉じこもっている人
  7. 学ばない人

今自分にはメンターがいるのだろうかと考えると微妙な気がしてきました。メンターにもメンターが必要ですね…。

複芸を知り、一芸に秀でよ

T型人材を目指そうというお話です。自分もメンターの方から「砂山型のスキルセットを作ろう」と言われていた事を思い出しました。一つ軸になるスキルを持ち、周りにあるスキルも磨いていこうという事ですね

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第2章: リーダーになり始めた人向け

リーダーになった人、実際に部下を持った人はどういう事を考えるべきかという内容が中心です。つい最近まで自分も部下だったのに、むしろ誰かの部下である事自体は変わらないはずなのに、部下が感じる事を改めて知る必要があるというのは目から鱗が落ちるような感覚でした。

「部下を持つ」とは

リーダーの行動を知る前に、リーダーの本質を理解する必要がある。言葉を換えれば、そもそも部下を持つとはどういうことか。組織とは何であるか、を問うことだ

確かに表面的にリーダーの行動を取ったとしても、うまくいくイメージはないですね。そして本書では上司の役割を

人を通じ、部下を通じて、いままでより大きな、世のため人のために役に立つ仕事をすること

としています。よって、部下の力を最大限発揮させられた方が上記の役割を全うしやすいというわけですね。部下の力を引き出すにあたり大事な事として

上司は部下に幸せをもたらす存在であるべき

とあります。多くの会社員は家族と過ごす時間よりも同僚や上司と過ごす時間の方が長いという現実があります。となると、上司は部下にとっての幸せを大きく左右する存在となってくるわけですね。部下は幸せであった方がより力を発揮できると仮定すれば、上司は部下の幸せに対して影響力があることを自覚する、責任を持つ必要があるのだと解釈しました。そしてこの幸せというパラメータを高めるために、後ほど説明する3Hの排除3Kの提供に注力する事が上司のとるべき行動なのかなと思います。

3H(疲労感、疲弊感、閉塞感) の排除

今更この3つのワードが何かと説明する必要はないかと思いますが、なぜこの3Hが発生するかについては次のように説明されています。

  1. 会社や自分自身の方向性が見えない
  2. 上司や会社から、何を期待されているのかわからない
  3. 自分の仕事の業績が、どう評価されているかがわからない
  4. 自分に対する評価が、処遇に結びついていない

多くの問題は不透明さ、上司と部下のコミュニケーションが足りていない事へ帰着するように思えます。本書では繰り返し上司と部下のコミュニケーションにおけるギャップについて触れていますが、これは本当に気をつけないといけないなと思います。

3K(環境、金、心) の提供

「3H」と打って変わって「3K」すなわち「環境」「金」「心」は社員の満足度を圧倒的に変えるものとされています。

「環境」にも3種類あり(物理的、時間的、人的)中でも人的環境がとりわけ若い人にとって重要な要素となります。良い人間関係に恵まれれば刺激や勉強になり、楽しく成長できる。特に言うことはないですね。

次は「金」ですが

給料やボーナスがいい会社は、少ない会社よりも基本的にいい会社である

間違いないですね。とは言え、

金が多いということは、短期的な動機促進要因や不満足の防止要因にはなるけれど、長期的な動機促進要因にはなりえない

とあります。「給料が増えて嬉しい」といった気持ちもすぐ慣れてしまうからですね。それでもやっぱり多いに越したことはありません。

社員がワクワクモードで仕事をしているかどうか。それには「心」が1番の決め手となってきます。心の満足度を高めるために次の5つの要素が登場します。

  1. 方向性
  2. ストレッチ納得目標
  3. 正しい権限移譲
  4. 八褒め二叱り
  5. 公正な評価と処遇

一つずつ見ていきましょう。

方向性

方向性が見えないと3H(疲労感、疲弊感、閉塞感)に陥るだろうという事は容易に想像が付くかと思います。この方向性は

理念 + 目標 + 戦略 = 方向性

といった式により表現され、「理念」「目標」「戦略」を決めるためのステップが次のものとなります。

  1. 現状認識
  2. 「なりたい姿」を明確にする
  3. 「何をするか」を考える

本書では「どうなりたい」の中に「目標」と「理念」の2つの意味が含まれているとしています。

  • 理念 … 「あらほましき姿」の事、どうなりたいかという定性的な思い
  • 目標 … 売り上げや利益など、定量面での「なりたい」

ストレッチ納得目標

上司や会社に押し付けられた目標よりも、自分が納得して建てた目標では動機、意欲、やる気が全然違うだろうというのは言うまでもないでしょう。上司は部下に目標を与えるのではなく、一緒に作っていく姿勢が必要となります。一緒に作られた目標には愛着感、所有感が生まれ、コミットメントをもたらす事となります。

ただ楽なものではなく、不可能でもない、挑戦的で達成感のある目標を用意するためには話し合いが必要となります。

人間関係の基本とは、相手を正しく理解することである。聴かなければ、相手を正しく理解することはできない。もうひとつの基本が、相手に対する信頼と尊重である。相手を認めるところから、人間関係は始まる。

なんだか当たり前のような事ですが、ここまで述べてきたように当たり前をこなす事は大変です。著者がジョンソン・エンド・ジョンソンの社長時代に調査したところ、上司と部下の間では見事なまでに認識のズレがあった事も語られています。

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忙しさにかまけて部下の声に耳を傾けていない上司 は「精神的難聴者 」と斬り捨てられています😂。

正しい権限移譲

ほとんどの人は仕事を任せられるとうれしいものだ。人から、上から信用、信頼された、と感じるはず(中略)「人を育てるための最も効果的な方法は、任せることである」

ここでも上司、部下の認識違いがあり、上司は自分が思っているほど部下に仕事を任せられていないという事が述べられています。じゃあどう任せるのかというところで基本的な条件が2つ登場します。

  1. 中間報告をうける
  2. ヒントを与える

暇になったから「あれどうなった?大丈夫?」などとやらかすのは最悪のパターンだそうです😇。「部下はうるせえな、じゃあ自分でやれよと思う」とありましたが、よく考えたら自分もこんな事考えてたので気をつけます。そしてこうならないために事前の取り決めが重要になってくるわけですね。

懇切丁寧に手とり足とり部下を指導するのは、決していい上司ではない(中略)善人でもなく、むしろ悪人である。罪人と呼んでもいい

はい、罪人です。この節では最後に「任せなさすぎて失敗」するのと「任せすぎて失敗」するのはどちらが良いかという話が出てきますが、「任せすぎて失敗」した方が良いと書いてあります。なぜなら、失敗という短期的なペナルティを払ったとしても、それにより人が育つ事、人が育って会社が育つ事の方が長期的なリターンに繋がるからです。

八褒め二叱り

人は誰でも認められ、褒められたいのである

何もうやうやしく表彰を渡したり、難しい褒め言葉を言う事だけが「褒める」ではないのです。一言軽く「褒める」だけでも全然良いのです。たったそれだけでラポール(信頼関係や安心関係、心の架け橋)が生まれるとされています。これを8割くらいの比重でやっていけという事です。

人は、褒めに対する反応度よりも叱りに対する反応度のほうが四倍も強いという。だから「八褒め二叱り」でちょうどイーブンになる

4倍の根拠は謎ですが、実感値として叱られた方が印象、記憶に残りやすいというのは分かります。また、叱るといっても叱るべき対象は「モノ」と「コト」に限定すべきで、人格否定になってしまわないように気をつけよとあります。「怒り」のベースには感情があり主観的ですが、「叱り」のベースには愛があり客観的であるべきなのです。

公正な評価と処遇

教育を得る機会、上司から指導してもらう機会、そういうものはあまねく全社員に平等に与えなければなるまい

そのうえでの処遇は公正にすべき、という話です。同意です。

「育っていない」のではなく「育てていない」

経営者や上司は、どんなに業績を挙げたとしてもそれだけでは50点、後継者も育てなければ100点にはならないとの事。どんな部下であったとしても「育てていない」のであれば上司の責任。では「育てられる上司」と「育てられない上司」の違いは何かというと

育て方に画一的なパターンはない、ということを知っているかどうか

だそうです。個性や技能、技量、スキルの成熟度も違えば考え方、理念、哲学も違うわけなので、部下にあった育て方を必死で考え、それなりの方法を探し出せないと本物の上司ではないという訳です。本物の上司!

さいごに

思ったより長くなってしまいましたが、上司としてリーダーとして知っておきたいこと、気をつけたい事がまとまっていて良い本だなと思いました。「自分がメンバー(部下)として感じていたことってこうもあっさり忘れちゃうんだな」という事に気づけたのは本当に良かったなと思います。

また、この本を教えてもらった方から「マネジメントをするというのはその人の人生を背負うくらいの覚悟がいる」というお話も聞きましたが、これだけの事を徹底するのであればそうなるよなという納得感が生まれました。いきなりこれを全て実践するのは難しいですが、本書の最後にも

「すべてを終えばすべてを失う」(中略)できるところから一つひとつやっていけばいいのだ

とあります。できる事から挑戦してみましょう!

伝説の外資トップが説く リーダーの教科書

伝説の外資トップが説く リーダーの教科書

*1:光文社の編集長、神吉晴夫氏の言葉: 「まだ足りない」「まだ未熟」「改善の余地がある」といった気持ち